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6 術式
鍼は日本と世界においても手技が異なり、また、日本の中でも流派によって手技が変化するが、この項では東洋療法学校協会による指導を元にして述べる。前消毒、挿管、前揉捏、押手、留管、弾入(切皮)、除管、刺手、刺鍼、刺鍼中の手技(鍼の手技)、抜鍼、後揉捏、後消毒の順で行う。
- 前揉法
- 刺鍼に対する予告で、皮膚の触覚や圧覚を刺激し、快感を起こし精神的緊張をとる(快刺激効果)。刺鍼部の皮膚の血行を良好にし皮膚感覚の感受性を適当にし刺入しやすくする。刺鍼部の筋肉
- 押手と刺手
- 押手(おしで)は刺鍼動作時に鍼が動かないように刺鍼部を固定するため鍼や鍼管を保持する手。皮膚の緊張度を調節する。鍼体を保持して刺鍼を容易にする。患者の不意の動きを防止する。古法では寒熱、虚実、気の往来を知り、響きを感知する(ただし、アメリカでは衛生面の問題上のためか、中国式の術式を用い、押手をせずに鍼体を触れないで施術を行う。中国式の鍼を使用し、太さも日本でいう所の5番鍼以上の太い鍼になる)。押手をする時は押手の消毒に気をつける。押手の圧には左右圧、上下圧、周囲圧がある。
- 左右圧(水平圧)は、母指と示指が鍼体をつまむ力加減のことで、鍼の進退・保持を円滑かつ正確に行うためのもの。弱すぎれば鍼は倒れ、強すぎれば刺入は困難になるのでつまむ程度が良い
- 上下圧(垂直圧)は、左右圧を作った母指と示指で刺鍼部位にかける圧の加減のことで、部位や患者の緊張度、疾病の状態、手技の差により圧は変わるが一度一定の圧を加えたら手技が終わるまで変えないのが原則
- 周囲圧(固定圧)は、左右圧と上下圧で使う以外の指、すなわち中指、薬指、小指の指腹と、小指外側から小指球にかけての部分全体で患者にかける圧のことで、刺鍼部全体を固定し、患者自身による急激な動揺を防ぎ刺鍼部周囲を安定させ、皮膚と筋肉が滑動して鍼が曲がることを防ぐ働きがあり、全体に圧がかかることによって刺鍼中の変化をとらえることができ適度な一定の圧がかかることによって患者に安心感を与える効果もある。
- 刺手(さしで)は鍼を刺入、抜鍼するための手。通常、利き手を刺手にする。
- 切皮
- 穿皮・弾入とも言う。鍼を身体に入れる動作を指す。この時に痛みを一番感じやすく、それをできるだけ少なくするために管鍼法が作られた。また前揉法、押手によっても切皮痛は軽減できる。
- 刺入・抜鍼
- 鍼を奥に刺し入れることを刺入といい、鍼を抜き去ることを抜鍼という。このときに回転を加えたり、抜き差しの動作を小刻みに行う雀啄という手技などを加えることで、鍼による刺激を増減させる。
- 後揉法
- 鍼痕を未然に防ぎ、また、鍼痕ができた場合にはその消退をはかる。刺鍼刺激感を鎮める。毛細血管やリンパ管の損傷によって生じた出血やリンパ流出を速やかに止め吸収をはかる。刺鍼により損傷を受けた組織の再生を促す。生体反応を高めることによって、治療効果を高める。皮膚の触覚や圧覚を刺激することにより、快感を促し、刺鍼に対する不安感を取り除き安心させる(快刺激効果)。